2019.06.26
京橋白木の取り組み
奈良で育まれる吉野杉、そこで醸される日本酒｜花巴（美吉野醸造）
奈良吉野。東京から行くには半日かかる紀伊半島の“へそ”のようなこの地は、南北朝時代の後醍醐天皇にまつわる歴史的な逸話も多い場所です。
吉野の名前で最も有名なのは「吉野杉」ではないでしょうか。以前、このブログでもご紹介した「木桶づくり」の大事な原料となる杉材は、まさにこの吉野から切り出されて運ばれている「吉野杉」に他なりません。
◎絶やしちゃダメだ！日本の発酵食を支える《木桶（きおけ）》のはなし
映画「Vision」の舞台
杉や檜（ヒノキ）を育むこと。林業は、長年の知恵と山守による丁寧な管理が欠かせません。効率化やコストパフォーマンスを考えれば、海外からの輸入材にはどう足掻いても勝ち目なし。それでも、この「吉野杉」はかけがえのないもの。
安価な杉材では、良質な木桶はつくれず、山深い立地だからこそ生まれ根付いた発酵食の文化も支えられないのです。
自然に寄り添い、その声を聞き、暮らしにつなぐこと。吉野の杉や檜の山が、どことなく神秘的な空気を帯びているのは、つましくも凛とした生活精神が息づいているからかもしれません。
2018年に公開された映画「Vision」の舞台となったのも、ここ。
『あん』『光』などの作品で世界中で高い評価を受ける映画監督、河瀬直美さん（奈良県出身）が手がけ、『イングリッシュ・ペイシェント』フランスの名女優ジュリエット・ビノシュと河瀬作品に欠かせない俳優・永瀬正敏がダブル主演を務めた映画です。
河瀬直美監督が永瀬正敏とフランスの名女優ジュリエット・ビノシュを主演に迎え、生まれ故郷である奈良県でオールロケを敢行したヒューマンドラマ。フランスの女性エッセイストで、世界中をめぐり紀行文を執筆しているジャンヌは、あるリサーチのために奈良の吉野を訪れ、山間に暮らす山守の男・智と出会う。智は、山で自然とともに暮らす老女アキからジャンヌとの出会いを予言されていたが、その言葉通りに出会った2人は、文化や言葉の壁を超えて次第に心を通わせ、さらに山に生きる者たちとの運命が予期せぬ形で交錯していく。ジャンヌ役をビノシュ、山守の男・智役を永瀬が演じるほか、岩田剛典、美波、森山未來、田中泯、夏木マリらが出演。
（Webサイト「映画.com」より引用）
吉野杉の木桶も使い、育まれる日本酒 〜花巴〜
吉野の発酵食文化とともにある酒造りをめざすなか、自然淘汰と自然共存を意識した「酵母無添加」の製法にたどりついたという酒が、美吉野醸造の「花巴（はなともえ）」です。
「酸を抑制するのではなく、酸を開放する酒造り。」
蔵人である橋本晃明さんは、そう語ります。山廃・生酛・速醸、3つの製法がもつ酸の表現を引き出し、酸っぱいのではなく、心地いい酸とうま味が同調した味わいをテーマとした酒です。
米は、吉野の契約農家のものを。五百万石や雄町などの品種を使用していますが、今後は酒の名前に酒米の銘柄はうたわないようにするそう。
日本酒づくりは複雑な工程があるため、米の味わいがそのまま出来上がりの酒の味わいに直結するわけではないからというのが主な理由です。
酒造りは、ステンレスのサーマルタンクなどももちろん使って醸していますが、一部の酒は「木桶仕込み・杉樽貯蔵」。
吉野杉の良さを伝えるため、「木のある暮らしを物語る協議会（山守・製材・樽丸・醸造）」による木桶仕込みの復活プロジェクトとして、限定酒をつくっています。
宿で鴨すき、山でバーベキュー
甘味と酸味が豊かで、じんわりと広がるうま味も魅力的な「花巴」は、まさに食中酒。食事に合わせて楽しむことで、その魅力がグンと広がる日本酒です。
吉野を訪ね、山に入り・・・宿では「鴨すき（鴨肉のすき焼き）」を食べながらの飲み比べを堪能。
そして、翌日は山守さんのガイドで吉野杉の山を歩き、その後に野外バーベキューを楽しみながらの飲み比べをさせていただきました。
カチョカヴァッロはアルミホイルの上でグリル、カマンベールチーズの簡単フォンデュには、白ワインの代わりに山廃純米のにごり酒「花巴 正宗」を入れて・・・
山深い吉野の里で、古（いにしえ）からの発酵食文化を体感する週末。おいしさと学びを求めて・・・また訪れたい大人の遠足となりました。
（by さすらいの食人S）
美吉野醸造（花巴）
奈良県吉野郡吉野町六田1238-1
Tel. 0746-32-3639
＊蔵に直販所もありますので、購入可能です
テーブルの上に、新しい価値を
飲食店の皆様のために、料理の価値を向上させる器や道具、サービスを日本全国から厳選して提案する「京橋白木」。
創業から120年を超え、蓄積されたノウハウと経験で次代のトレンドを創出し、きめ細やかな物流で食産業に快適な環境基盤を構築。外食産業の発展に寄与しています。
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