2018.12.13
テーブルデザイン事業
《美濃焼》東産工業所 東峰窯|つくりてを訪ねて Vol.3
強度のある磁器の器を作り、デザインにもこだわる。
陶器をつくる窯元が多い美濃焼の中で、業務用向けを中心として強度のある磁器で器づくりをしている東峰窯。
柔軟でありながらもこだわりを持った「東産工業所」を訪問し、塚本六美社長と企画開発室の外波山央理さんにモノづくりへの想いをうかがってきました。
ー本日はお忙しいところ、ありがとうございます。それにしても、暑いですね。
塚本 いま美濃は一番暑い時期なんですよ。今日は工場の中は42℃を超えているのではないでしょうか。体験ツアー楽しみにしてくださいね(笑)
ーそんなに上がってるんですか!楽しみに・・・覚悟しておきます(笑) 東峰窯さんの器は強度があるために長年同じ商品を使い続けているというお客様がいらっしゃると聞いたのですが、そのエピソードを詳しく聞かせていただけますか。
外波山 社長が東京に行った時、弊社が昔作っていた器を使っていただいてたお店があったそうで。聞くと、ずっと使っているけれど丈夫で、40年も現役で使ってくれていたそうです。
ーえっ、40年もですか!?
塚本 初めてその店を訪れたのは、大学時代のことなんですが、当社の小鉢が使われていました。先日近くを通ったもので、再訪してみるとまだ同じ小鉢を使っていただいていて・・・あれから40年ですよ。お店の方に話を聞くと「丈夫でずっと使ってるんだよ」と話してくださって。
「そろそろ引退させようかな」というので、記念にもらってきて、今もショールームに飾っています。
当時は肉厚で製作していたものの、強化磁器ではありませんでした。それでもお店で毎日使用している小鉢が40年間も使っていただけるほど丈夫なのかと私も驚きましたね。
お客様の要望で厚くて丈夫なものというリクエストがあった時は、東峰窯を思い出してください。
塚本社長(左)と外波山さん(右)
ーもちろんです(笑)でもどうしてそんな強く作れるんですか。
塚本 土は昔とは変わっていますが、「とにかく厚口で割れにくいもの」という商品をメインに作っている点は変わっていません。今は「薄くつくってくれ」という要望が多いので、薄めの商品も多くなりましたが、元々が厚口で作っているので、割れにくくなっています。
また、最近は割れにくい器という注文なら「強化磁器」となります。それ以前の器に比べ3倍くらいの強度になるので、もっと丈夫になってきたと言えると思います。
強化磁器のマグカップは本当に強いですよ。子どもが毎日ガチャガチャ使っても割れずに、今でも使っていますし。
少量で製造できるのも、一つの強み
ー東峰窯さんは業務用がメインですよね。お客さまの層はどういった方が多いのでしょうか。
塚本 昔は同じ柄で統一された器が多かったので、結婚式場や旅館・ホテルなどが多かったですね。でも、最近は少しずつ単品で注文をするお客さまが増えてきました。
「このお皿はどこの産地、このお皿はどこの産地で」という感じで少数の器ごとに産地の違う器を使われるような。
弊社は大量生産だけでなく、少量で製造できるのも一つの強み。先ほどのような居酒屋・ファミリーレストランなどのお客さまのニーズに応えられることもあり、そういったお客さまも多くなってきましたね。
ー今SNSが流行っていますが、新たなお客さまの開拓や器つくりのヒントに採り入れられる窯元さんも多くなりましたが、東峰窯さんも導入されているサービスはありますか?
塚本 私はインスタグラム見ますけど、趣味程度でしか見ませんね。器関係は全く見ません(笑)
外波山 私は器関連もチェックしています。弊社もインスタグラムを数年前からやり始めています。ぜひチェックしてみてください。
鮮やかな発色のAOシリーズのプレート
ー東峰窯さんは、機械での製作が主になるのでしょうか。
外波山 後でご案内しますが、機械による型、成形となります。弊社の絵付け技法としては、手書き・吹き・絵具を和紙に刷って紙を素焼きの生地に写し取る等がありまして、一通りの対応は可能です。
ー新商品はどのようにして生まれるのでしょうか。
外波山 メーカーなので年に数回の展示会があり、新春には大きな規模のものがあります。そこに向けて新商品を3~4種類発表して販売するというパターンですね。
2月のホテルレストランショーにサンプルが間に合うようにも動いています。小さな展示会では釉薬を変えたり、柄を変えたりして軽く改良して出すことも多いですね。
年間の流れということで言えば、毎年夏頃から新作に向けて動きだします。
企画は私一人で行っていますが、何種類か作った中から候補を絞り、社内で決めます。新商品を作る上では、陶器の展示会での情報収集に限らず、色の流行り、硝子・インテリアなども参考にしています。インスタグラムも重要ですね。
ー今のトレンドはどういったものですか?
外波山 色々な方と話をしますが、2020年の東京オリンピックまでは、マット系の商品が出続けるのではないかと思っています。
でも、マットばかりでは見飽きますよね(笑)弊社ではマットの中に艶を入れてアレンジしようと考えています。あとは業務用がメインでやっているので、磁器の使いやすさと、土物でしか出ないような雰囲気を取り入れる努力もしています。
トレンドのマットな質感に仕上げた器
ー飲食店やお客さまに伝えたいことはありますか?
塚本 セールストークを京橋白木さん含め、皆さんにもっと身に付けてほしいと思っています。お客さまは見ただけはわからず、値段ありきだと思っています。そして全く強度ということを考えていないような気がします。
弊社は全ての商品に対して熱衝撃のテストを行い、クリアしないと出荷しません。丈夫で大量生産も可能という所をアピールしていってほしいです。
グルメ番組を見ていると、美味しそうな料理なのに、盛られている器が100円均一のようなものを使っているということがよくあります。
そういう場面を見ると「ふざけんな!!何が高級店だよ」と言いたくなってきます(笑)飲食店さんにはもっと器を理解してほしいし、ていねいに扱ってほしいと思います。
吹き付けの作業を一つ一つていねいに仕上げる職人
ーそうですね。東峰窯さんは工場を含め、とても規模が大きい印象を受けました。社員さんは何名ほどいらっしゃるのでしょうか。
塚本 30人程です。美濃焼業界では昔は1300社くらいあり、100人を超えるところが10社くらいありました。今は400社を切り、100人を超えるのは1社か2社だと思います。
今は50人いれば大手だと思うので、弊社の規模なら中堅といっていいでしょうね。
外波山 大手ではないからこそやれるということも多くあります。小さな窯元さんに比べたら生産能力が高いので、オーダーにもよりますが少量の注文に対応できるということ、ある程度数がまとまっても対応ができるというのは強みです。
ー今後の目標を教えてください。
外波山 良い商品を作り続けていくということ。これは使命だと感じています。また、若い人の力が必要です。
従業員不足の問題もありますので、ものづくりが好きな人が魅力を感じる会社にしていきたいです。
インタビューを終えて
大きな工場には材料や素焼きされたものが多く並んでいる
インタビュー後に、とても大きな工場を拝見させていただきました。大きな窯が3台あり、すべて稼働すると優に40℃を超えるそうです。
2階建ての工場で、大きな機械から次々と作られていく陶器は、1日2000個の生産能力があるとのこと。「土→型→釉薬塗り・吹き付け塗り・手書き→バリ取り」と陶器製作の一連の流れを拝見しました。
「大量生産=流れ作業」というイメージが私にはありましたが、それぞれの現場でていねいな仕事風景を目の当たりにし、この考えは間違っていたことを実感しました。
インタビューでお話しいただいたことだけでなく、体力的にも厳しい環境の中で集中して、ていねいな器を製作される東峰窯さんの現場を肌で感じ、「本当に値段以上の付加価値が多くある器だ」と強く感じました。
飲食店のお客さまに、業務用にぴったりの強度とデザインを兼ね備えた、東峰窯さんの器を紹介していきます。